
築年数が経過した、古い木造住宅でも、耐震補強によって安全に住み続けることができます。今回は、壁と基礎の補強を中心に、具体的な耐震リフォームの方法を解説します。
壁の耐震性を高めるためのリフォーム技術

筋交いの補強と耐震パネルの導入
壁の内部に取り付ける筋交いは、建物の横揺れに対する強度を左右する重要な要素です。既存の筋交いが細い・配置が不十分な場合、金物での補強や新しい筋交いの追加によって大きく強度を向上させることが可能です。
また、構造用合板や耐震パネルを壁内部に設置することで、面全体で力を受け止められるようになり、建物のねじれや倒壊を防ぎやすくなります。
壁量のバランスを見直して配置を最適化
筋交いやパネルを入れても、壁の配置バランスが悪いと建物が不均等に揺れ、かえって被害を受けやすくなります。そこで、リフォーム時には建物全体の重心と剛心の位置を計算し、バランス良く壁を補強することが重要です。
特に1階に壁が少ない場合や、片側に開口部が集中している場合は、耐震上の弱点になりやすいため注意が必要です。
仕上げ材や断熱と両立する耐震補強の工夫
壁の内部に構造材を追加する場合、仕上げ材や断熱材との相性も考える必要があります。近年は、補強材と断熱材が一体になったパネル製品もあり、見た目を損なわずに耐震性能を高めることが可能です。
また、内装の雰囲気を変えずに施工できるよう、既存の壁を一部残して補強する「部分耐震リフォーム」も人気を集めています。
基礎補強の重要性とその方法

ひび割れ・劣化のチェックと補修
築年数の古い住宅では、基礎のコンクリートが劣化していることが少なくありません。表面のひび割れや中性化による強度低下は、家全体の耐震性を損なう重大な要因です。
補修では、ひび割れの注入補修やカーボンシート巻き、表面保護剤の塗布などが用いられ、基礎を長持ちさせるための対策が取られます。
基礎の増し打ちや布基礎からベタ基礎化
昔の木造住宅では、布基礎と呼ばれる細い基礎が主流でしたが、現在主流の「ベタ基礎」は、耐震性・湿気対策ともに優れています。既存の基礎に新たなコンクリートを増し打ちして補強する工法は、費用と強度のバランスが良好です。
特に地震荷重が集中する隅角部や柱脚部は、重点的な補強が推奨されます。
アンカーボルトやホールダウン金物の設置
基礎補強と同時に検討すべきなのが、上部構造との連結強化です。アンカーボルトやホールダウン金物を増設することで、柱が地震時に抜けるのを防ぐ効果があります。
特に、建築当時の基準で設置されていなかった住宅では、耐震診断の結果に基づいて的確に設置し、構造全体の一体性を高めることが重要です。
リフォーム前に行うべき耐震診断と補助制度

専門家による耐震診断の重要性
リフォームに着手する前に欠かせないのが、建物の構造的な弱点を把握するための耐震診断です。特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は、構造的な問題を抱えていることが多く、診断によって補強箇所や優先度が明確になります。
自治体によっては、専門家による診断を低価格または無料で受けられる制度も整備されています。
診断結果に基づいた補強計画の立案
耐震診断の結果をもとに、壁・基礎・屋根・バランスなどの補強計画が立てられます。すべてを一度に補強するのが理想ですが、予算に応じて段階的に行うことも可能です。
「どこが弱いのか」「どこから手を付けるべきか」を可視化することで、無駄のないリフォームが可能になります。
自治体の耐震補助制度を活用しよう
多くの市町村では、耐震診断や補強工事に対する補助金制度を用意しています。補助金額は数十万円に及ぶケースもあり、条件を満たせば大幅な費用軽減が可能です。
また、バリアフリー改修や省エネリフォームと組み合わせて使える制度もあるため、計画段階で自治体の窓口に相談しておくのがおすすめです。
耐震リフォームにおすすめの商品3選
築30年の木造住宅を安心して住み続けるための壁・基礎補強に役立つ、信頼性の高い耐震資材を厳選してご紹介します。
住友林業クレスト「ダイライトMS」

- 耐震性能を強化する壁倍率2.5倍の構造用面材
- シロアリ・火災・湿気にも強い無機質素材
- 屋内・屋外どちらにも使用できる汎用性
壁補強の定番として多くの現場で採用されているダイライトMSは、防火・防蟻・耐久性能も備えた信頼の国産ボード。既存の壁にも取り入れやすく、築古住宅の耐震化に最適な製品です。
BXカネシン「メタリフ筋かいプレート MLSP」

- 片側施工可能なリフォーム対応金物
- 壁倍率最大3.0倍の補強性能
- ステンレス製で高い耐久性と耐食性
筋かいの強度を確実に確保できる、BXカネシンの筋かいプレート。現場での施工性が高く、限られたスペースでも使いやすい形状です。コストパフォーマンスにも優れ、補強数を増やしやすいのも魅力です。
城東テクノ「キソパッキンロング」

- 基礎と土台の間に設置する通気型パッキン
- 床下の湿気を防ぎ、土台の腐食を抑制
- 耐震・防蟻性能に貢献する構造材
基礎の見直しにおすすめの、信頼性の高いロングタイプパッキン材。床下の通気を確保し、土台の耐久性と建物全体の耐震性を高める役割を果たします。戸建てリフォームにおいて、構造面から安心を支える定番資材です。